2022-01-01から1年間の記事一覧

しにたい気持ちが消えるまで

生死の話だと構えて読み始めたら、それ以上に「生活」が書かれていて驚いた。生きること(死ぬこと)の本質は、結局のところ、日々の生活のなかにあるんだろうな、と理解することにした(まだよく分からない)。何年か後に読み直したい。 作者が詩人だからな…

言語はこうして生まれる —「即興する脳」とジェスチャーゲーム—

たった一つのアイデアから広げる大風呂敷の心地よさ。まだ実証されてない内容が多く、良い意味でスリリング。自然淘汰とのアナロジーも楽しかった。 AI を使ったシミュレーション(多分毎秒数千回のジェスチャーゲームをこなせる)で AI 独自の言語が発生す…

いずれすべては海の中に

きれいな装丁。紙の本の素晴らしさを感じる。迷わず購入。 一本目「一筋に伸びる二車線のハイウェイ」でガツン。「記憶が戻る日」「風はさまよう」「オープン・ロードの聖母様」が好き。 日常にある偶発的な感情が SF 設定を置くことで説得力のある物語にな…

10 の奇妙な話

どの物語も途中で(あるいは初っ端から)狂気に突入する。狂気なのに妙に心地よい。 「骨集めの娘」は狂気に気付かないまま読み終えてしまった。たぶん今の気分に合ってた。よかった。 10の奇妙な話 (創元推理文庫) 作者:ミック・ジャクソン 東京創元社 Am…

脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか

途中で違和感があり、原題を見たら「Restless Creatures: The Story of Life in Ten Movements」とのこと。そもそも脚ひれ翼の話じゃなかった。そこからは素直に読めた。進化論は楽しい。趣味は「進化論鑑賞」にしよう。 文庫 脚・ひれ・翼はなぜ進化したの…

発達障害「グレーゾーン」

一般的に(業界的に)認められた内容なのか、著者の個人的な見解なのか、境界が分からず少し戸惑う。「グレーゾーン」の話なので、そもそも「一般的に認められた内容」というのは存在しないのかもしれない。表紙に猫がいるのはずるい(褒め言葉)。 発達障害…

常設展示室

一本目「群青 The Color of Life」が良かった。絶望感が迫ってくるなかの小さな希望。たぶん希望なんだと思う。 常設展示室―Permanent Collection―(新潮文庫) 作者:原田マハ 新潮社 Amazon

こうしてイギリスから熊がいなくなりました

かつては身近にいたはずなのに、いつのまにかいなくなってる「熊」たちの物語。淡々とした語り口で、急かされることなく読み終えた。よかった。 こうしてイギリスから熊がいなくなりました (創元推理文庫) 作者:ミック・ジャクソン 東京創元社 Amazon

女が死ぬ

一本読むごとに、精神のどこかに棘が刺さったり、何かが詰まったり、逆にほっこり温かくなったり。どこにも辿りつかないけど妙に納得感のある物語たち。 女が死ぬ (中公文庫) 作者:松田青子 中央公論新社 Amazon

すべて忘れてしまうから

最初、よく分からないまま十本ほど読んでしまう。そこでやっと文章に焦点が合う。 「いいか、偉そうにするなより疲れるからな」 「分かったよ」 それが、祖父と交わした最後の会話だった。(p.53) 最初から読み直す。これはエッセイではないな、と思う。

東京藝大 仏さま研究室

研究室のかなり独特な活動内容が、ごく自然に物語の土台になっていて、読んでて楽しかった。いいなあ、青春。 東京藝大 仏さま研究室 (集英社文庫) 作者:樹原 アンミツ 集英社 Amazon

プロジェクト・ヘイル・メアリー

科学は基本的に「一回目は成功しない」ものだと理解してるので、科学の物語として読むことができないかった。主人公の『生きる姿勢』の物語として捉えることで、なんとか読了。 最後の1ページが良かった。「そうか、そういう物語だったのか」と腑に落ちた。…

悪い言語哲学入門

あんまり良いので二回読んだ。とても丁寧な文章。そして注釈。 今まで「国語の勉強が必要な分野」と思って遠巻きにしてたあたりが、すっきり理解できた。 悪い言語哲学入門 (ちくま新書) 作者:和泉悠 筑摩書房 Amazon

しゃもぬまの島

血縁は怖い。祐は、紫織は、どうなってしまうのだろう。 それはそれとして、しゃもぬまがよかった。無邪気で元気なしゃもぬまも見てみたい。 しゃもぬまの島 (集英社文庫) 作者:上畠菜緒 集英社 Amazon

「つながり」の進化生物学

意識には進化論で言うところの適応価がない、と仮定したうえで、前適用(副産物)として意識ができあがった。という仮説は、かなりドキドキした。なるほどその手があったか。 以下、引用。カメについて、共感。 ちなみに、カメを飼っている人はコミュニケー…

なめらかな世界と、その敵

一人称視点の描写で SF 設定を語り切っていて驚いた(最初は読むのがしんどかったけど慣れてからは心地よかった)。「シンギュラリティ・ソヴィエト」が良かった。 なめらかな世界と、その敵 (ハヤカワ文庫JA) 作者:伴名 練 早川書房 Amazon

まず牛を球とします。

文庫で買おうと思ってたのに、待ちきれずに購入。SF 設定が物語と渾然一体となっていて、読んでて心地良い。「沈黙のリトルボーイ」が良かった。 まず牛を球とします。 作者:柞刈湯葉 河出書房新社 Amazon

自由研究には向かない殺人

グイグイ読ませてくる本がいいなあ、と思って選んだ。細かいところは気にせず、一気に読み切る。満足。 自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫) 作者:ホリー・ジャクソン 東京創元社 Amazon

ボクたちはみんな大人になれなかった

読み始めてすぐに七割がた感情移入したあと、ずっと残り三割の違和感を抱えたまま、気付いたら物語が終わっていた。ずるい。 ボクたちはみんな大人になれなかった(新潮文庫) 作者:燃え殻 新潮社 Amazon

それでも日々はつづくから

エッセイなんだけど、良質な短編小説を読んでいるような。人生の「角度」が少し変わった気がする。 それでも日々はつづくから 作者:燃え殻 新潮社 Amazon

もじモジ探偵団

様々な分野の書体の、それぞれに特殊な事情が、分かりやすくコンパクト解説されている。すごい。再編成したら「書体とは何か、どうあるべきか」を語れるんじゃないかと思う。 もじモジ探偵団 まちで見かける文字デザインの秘密 作者:雪 朱里 グラフィック社 …

2022 年のパインぱんの人(とレモンコッペの人)

2022 年のパインぱんの人。爽やかなスタイル。シリーズ展開の「ぎっしりパイン蒸し」は髪型が違う(おしゃれ)。「瀬戸内レモンコッペ」にはレモンコッペの人。パインぱんの人に比べると純朴なイメージ。

100 文字 SF

短歌の歌集を読んでるみたいな気分。どのくらいの時間をかけて読んだらいいのか分からなくなって、1 ページごとに(つまり 1 話ごとに)ひと呼吸おきながら読んだ。面白かった。 100文字SF (ハヤカワ文庫JA) 作者:北野 勇作 早川書房 Amazon

現代思想入門

哲学のことは分からないままだけど「哲学の位置付け」みたいなのは少し分かったような気がする(つまり何も分かってない)。 読書体験としては、とても楽しく読めた。次の哲学の本を読みたいと、素直に思えた。 現代思想入門 (講談社現代新書) 作者:千葉雅也…

掃除婦のための手引き書

強くて濃い物語がみっしり詰まってた。受け止めきれない。何年か寝かせてから、もう一度読もう。そうしよう。 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集 (講談社文庫) 作者:ルシア・ベルリン 講談社 Amazon

これからの「正義」の話をしよう

8 章の終わりあたりから、名誉・承認・コミュニティ・誇りと恥、といった概念が次々と現れて、俄然面白くなった。この部分だけでもう一冊くらい読んでみたい。 これからの「正義」の話をしよう ──いまを生き延びるための哲学 (ハヤカワ・ノンフィクション文…

ひとり暮らし

詩集は敷居が高い気がして、詩人のエッセイを買ってみた。詩というのは感情と感性だと思い込んでいたのだけど、もしかしたら「身体(生活)と理屈を結んだもの」かもしれないな、と思った。良い本でした。 私はうんこ、しっこが生きることの究極の現実だと思…

ジョブ型雇用社会とは何か

会社が「〇〇式ジョブ型云々」みたいなことを言い出したので、仕方ない勉強するかと購入。ジョブ型礼讃の書だったらどうしようかと構えて読み始めたけど、杞憂だった。どちらかと言うと現状解説の本で、著者の主張は少なめ。今の自分に丁度良い。 以下、備忘…

改良

娘がポイっと置いていったので、読んだ。 自分の弱さに負けないための核の部分が「美しさ」だというのは、しんどい。少し前に軽い気持ちで Wikipedia の「ルッキズム」を読んでしまったのを思い出した。価値基準としての美しさはしんどい。 改良 (河出文庫) …

病理医ヤンデル先生の医者・病院・病気のリアルな話

2 章あたりで「何を読まされてるんだ(褒め言葉)」と戸惑う。3 章あたりで「これはたぶんヤンデル先生の生き方について書かれているのだろう」と勝手に納得して、そこからはすんなり読めた。なるほど。良い読書体験でした。 病理医ヤンデル先生の医者・病院…