月魚

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清潔感と背徳感。濃い登場人物と静かな文章。そう言えば「三浦しをん」ってこういう感じだったな、と不思議な感覚。調べたら前に読んでから十年近く経ってた。

 

あと、キャラがみんな濃くて月魚の存在を忘れてしまいそうだった。

 

 

 

 

実力も運のうち 能力主義は正義か?

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原著のタイトルは「The Tyranny of Merit(能力の専制)」であって、運とか実力とかの話ではないぞ。と自分に言い聞かせながら読んだ。自分の中でのタイトルは「労働の尊厳」にしておこう。そうしよう。

 

いくつか気付きがあった。優秀で正しいとしても信頼がないと議論は成立しないこと。自由経済があまりにシンプルでタフで、改変が難しいこと。「尊厳」なしでは人生が成立しないこと。などなど。

 

読書室と図書館のくだりが印象的だった。まずは読書室について。

 

示唆に富む例の一つが、アメリカで最初の大規模労働組合の一つである労働騎士団が、労働者が公共問題について学べるようにするため、工場内に読書室を設けるよう要求したことである。この要求は、市民としての学びは職場に不可欠だと考える共和主義の伝統から生まれた。(p.276)

 

次は図書館。「彼」は『米國史』のジェームス・トラスロー・アダムス。「一般閲覧室〜」以降は引用の引用(つまり『米国史』からの引用)。

 

具体例として彼が挙げているのがアメリカ議会図書館だ。それは「民主主義が自らの力で達成できることの象徴」であり、職業や地位を問わず、あらゆるアメリカ人を引きつける公共の学びの場である。

一般閲覧室を見下ろす。この部屋だけで一万冊の本が収められ、それらは請求する必要もなく、自由に読むことができる。座席は静かに本を読む人たちで埋まっている。老いも若きも、富者も貧者も、黒人も白人も、重役も労働者も、将軍も兵卒も、著名な学者も学童も、みなが、自分たちの民主主義が提供する自分たちの図書館で本を読んでいる。(p.320)

 

あと、以下のところで、なぜか泣きそうになってしまった。「オオサンショウウオ」が良かった。

 

生徒たちが不安げに、このでまかせ小テストも点数がつき、成績に反映されるのですかとたずねると、先生は「そうさ、もちろんだ」と答えたものだ。

そのときは、いっぷう変わっているが愉快な、教室での冗談だと思った。だが、いま振り返ってみると、ファーナム先生は先生なりのやり方で、能力の専制にあらがおうとしていたのだとわかる。生徒たちを選別と競争から引き離し、サンショウウオに目を見張るだけの余裕を与えてやろうとしたのだ。(p.280)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本訳書では(p.332)

このあたりうまく切り取りたい。

 

 

失われた過去と未来の犯罪

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第一部の「大忘却」が最高にスリリングだった。第二部は(個々のエピソードは興味深かったけど)全体としてどのように解釈すべきか戸惑った。

 

読み終えて三日ほどして「たぶんこれはホラーじゃないかな」と思った。そういうことにしておこう。

 

 

 

 

子どもができて考えた、ワクチンと命のこと。

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エッセイと科学ドキュメンタリーの奇跡の融合。

 

日常の心の揺らぎ(不安)と、科学的統計的な事実とが、折り合いそうでギリギリ折り合わない。絶妙なバランス感覚。

 

 

 

 

情報を正しく選択するための認知バイアス事典

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どこかで覚えた雑学たちの学問的な根拠が分かるのが案外心地よくて、一息に読み終えた。

 

挿絵は「愛の9時着」が良かった。

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身体感覚が流動的で拡張可能、という話は興味深い。

 

ゴム手錯覚という現象からわかるもう 1 つの重要なことは、自分にとって「自分の身体」として感じられる対象は、視覚や触覚などの複数の感覚から得られる情報を統合して間断なくつくり直されていて、私たちが普段考えているよりもはるかに流動的なものである、ということだ。

言い換えれば、自分の身体感覚は自由に拡張可能であると考えられる。(p.107)

 

あと、こういう雑学(?)にも、ちゃんと出典があるのが素敵。

 

とりわけ迷信行動を起こしやすい集団がいるという。それは運動選手、ギャンブラー、そして試験を受ける学生である(Vyse, 1997)(p.170)

 

 以下、この本で初めて知った概念や、おぼろげな知識を補強できたあたりを列挙。全体的に「社会心理学」の知識が薄いことが分かった。

 

注意の瞬き、注意資源(p.156)/モラル信任効果(p.198)/基本的な帰属の誤り、行為者・観察者バイアス(p.202)/防衛的帰属仮説(p.214)/心理的リアクタンス(p.218)/現状維持バイアス。個人差はあるものの、損をする分のおおよそ 1.5〜2.5 倍の利得があって初めて、私たちは損と得が釣り合うと感じる(p.223)/システム正当化バイアス(p.230)/チアリーダー効果・アンサンブル知覚(p.234)/身元のわかる犠牲者効果(p.238)/ダニング・クルーガー効果(p.250)/知識の呪縛、タッパー・リスナー実験(p.254)

 

 



 

「色のふしぎ」と不思議な社会

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二度読んだ。予想より内容が濃くて冷静に読めなかったから。

 

進化の「事例」としての「色覚の多様性」が興味深かった。でも、それ以上に、著者自身が「実は色覚異常ではなかった」と発覚するくだりが、著者の価値観の変化が、心に刺さった。それぞれの人にそれぞれの人生と価値観があるのだろうな、そしてそれは科学の進歩と無関係ではないのだな。と改めて思った。

 

該当箇所引用。

 

正常なのだから、単純に喜んでおけばいいと言われるかもしれない。しかし、実に半世紀近く先天色覚異常の当事者であることを受け入れてきたのに、その自己イメージを急に引き剥がされるというのは、ちょっと別の体験である。

(略)

「本当ですか?」と問いかけながらも、ぼくは決して幸せな気分ではなく、むしろ、自分の自分らしさの一部を引き剥がされる胸の痛みをますます強く覚えた(p.204)

 

「あとがき」からも。 

 

今、本書を終えるにあたって、つくづく思う。

自分が「異常者」と呼ばれるのはすごく嫌だが、だからといって「正常」に分類されたいわけでもない、と。

正常と異常の境界が溶けてしまった連続的な「色覚スペクトラム」、あるいは「色覚多様性マップ」の中に、「自分はこのあたり」と居場所をみつけられれば、それでよい。

ぼくはこのようにある。生まれ持った色覚は優れてもいなければ、劣ってもいない。(p.330)

 

あと、気になった箇所の引用。

 

ぼくは本書の中で、科学啓蒙主義的な記述を繰り返すことになるが、実は科学的であればそれが常に正しいという考えは素朴すぎることもあらかじめ強調しておく。(p.21)

 

「例えば、着陸の時に空港から示される PAPI のライトは赤と白ですが、その識別は正常色覚でも時々間違う人がいます。私たちが調べた 63 人の正常色覚者の中にもまちがえた人が 7 人おり、少なくとも 3 人は優位に間違いが多い結果になりました。ところが、CAD の閾値が 12 ユニット以下の 1 型の異常 3 色覚者はむしろ成績がよいくらいでした。2 型については、6 ユニット以下で同じことが言えました」

このような、一見、不思議に思えるけれど、繰り返しテストされて確かめられた事実は、旧来の色覚検査では発見できないことだ。たとえば、バーバーが石原表と PAPI のシミュレーターでのテストを付き合わせて確認したところ、石原表「正読」の割合と PAPI のスコアにはよい相関が得られず、どこで線を引けば安全を担保できるのか手がかりにはならなかったという。(p.226

  

ただし、スクリーニング検査にはクリアすべき諸条件がある。「原則と実施」に挙げられているものを、中澤が講義に使っているテキストから引用する。カッコ内は中澤による注釈だ。

  1. 目的とする疾患が重要な健康問題である。
  2. 早期に発見を行なった場合に、適切な治療法がある(治療法がないと「負のラベリング効果」になることがあるため、スクリーニングはしない)。
  3. 陽性者の確定診断の手段、施設がある。
  4. 目的とする疾病に潜伏期あるいは無症状期がある。
  5. 目的とする疾病に対する適切なスクリーニング検査法がある(「適切な」は費用や判定に要する時間も含む)。
  6. 検査方法が集団に対して適用可能で受け入れやすい。
  7. 目的とする疾病の自然史がわかっている。
  8. 患者として扱われるべき人についての政策的合意が存在する。
  9. スクリーニング事業全体としての費用—便益が成立する。
  10. 患者検出は継続して行われる定期検査にするべきで、「全員を一度だけ」対象とする計画ではいけない。

さて、どうだろうか。(p.242)

 

あと、この本、「小かぎ」がとにかくたくさんあって、ちょっと嬉しかった。ふたつだけ事例を。

 

普通の括弧でフォントサイズが下がった中にある小かぎ(p.11)

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【二重かぎ括弧+かぎ括弧】と【かぎ括弧+小かぎ】が隣り合わせ。(p.83)

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完全に蛇足だけど、小かぎになってないところもいくつか見つけた。スクリプトの自動処理じゃなくて、ひとつひとつ手作業で小かぎにしてくださってたのかと、心が引き締まる思い。

 

小かぎじゃない!?(p.85)

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小かぎじゃない!?(p.117)

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小かぎじゃない!?(p.143)

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小かぎじゃない!?(p.154)

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どこからが病気なの?

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どうにも「良書」と言えないのは、徹頭徹尾、たとえ話(アナロジー)だけで構成されているから。どんなに分かりやすくて実用的だとしても、アナロジー「だけ」で押し切るのは、副作用が大きい。危険だ。


…という建前はともかく、とても面白かった(おい)。

 

以下、素敵だったところ。

 

ところで私の知人はすぐテレビの健康特集にダマされる。ある週には納豆が体にいいと聞いてスーパーで納豆を買い込み、翌週にはカスピ海ヨーグルトがいいらしいと(略)。私はそれを見て、最初は、テレビのいいカモじゃないかと悲しい気持ちになったのだが、あるときふと、「週替わりで違う食材を試している結果、多様な栄養確保をできているんだよな……もしかしたらこれって、すばらしい食生活なのではないか?」と思った。一部の人間に見られる「飽きっぽさ」というのは、本人に多様な因子と触れる機会を与える、優れた生存戦略なのかもしれない。(p.102)

 

病気とは、「こないだまでの自分がうまく保てなくなること」。

健康とは、「こないだまでの自分をうまく保ち続けていること」(ホメオスタシス)。(p.109)

 

 

どこからが病気なの? (ちくまプリマー新書)

どこからが病気なの? (ちくまプリマー新書)

 

 

 

箱庭図書館

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買ったあとで企画モノ(読者のボツ原稿を乙一がリメイク)と気付いた。正直に言うと少し後悔したけど、読んだらちゃんと面白かった。後悔してごめんなさい。

 

「ホワイト・ステップ」はちょっと泣きそうになった。

 

 

箱庭図書館 (集英社文庫)

箱庭図書館 (集英社文庫)

  • 作者:乙一
  • 発売日: 2014/06/26
  • メディア: Kindle
 

 

 

WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か

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こんな挑発的なタイトルなのに、中身はバランスのとれた良書でした。

 

正直に言うと、物足りなかったのですが、読んでみないと分からないもんなあ。

 

少しずつ、だけど着実に、「養老孟司が帯(オビ)を書いてる本は、自分には合わない」という実績が積み上がってきている。ちょっと困惑してる。

 

 

WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か
 

 

 

動物園・その歴史と冒険

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動物の権利やエコロジーとかの「理想論」が、動物園というある意味泥臭い現場と結びつくことで、現実の課題として理解できたように思う。


いつのまにか「未来の動物園」に想いを馳せている自分に気付いた。素敵な読書体験でした。

 

 

動物園・その歴史と冒険 (中公新書ラクレ, 713)

動物園・その歴史と冒険 (中公新書ラクレ, 713)

  • 作者:溝井 裕一
  • 発売日: 2021/01/07
  • メディア: 新書
 

 



野良猫を尊敬した日

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帯に「ほっこり、肩の力が抜けるエッセイ」とあるけど、この作者の文章はそんなんじゃないことは、もう知ってる。読むとやっぱり、九割が絶望で、残りの一割は、その絶望に負けずに生きる物語だった。少なくとも私にとっては。

 

野良猫を尊敬した日 (講談社文庫)

野良猫を尊敬した日 (講談社文庫)

 

 

 

不穏な眠り

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葉村晶。今回は不幸成分が薄めなのかな、と思ってたら四作目の表題作がどっぷり不幸で納得。不幸小説。

 

 

不穏な眠り (文春文庫)

不穏な眠り (文春文庫)

 

 

 

絶対に挫折しない iPhone アプリ開発「超」入門

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SwiftUI(iOS 向け)の概要は、たぶん理解できた。最終的に開発したいのは macOS なので、もう一息がんばる(macOS 対象の書籍は少ない)。言語としての Swift についても、もう少し詳しく知りたい。ぼちぼち進めよう。