魚にも自分がわかる——動物認知研究の最先端

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「一気に魚まで行くなんて、ほんまかいな」と思って読んだら、ほんまやった。研究の楽しさが伝わってきて心地よい読後感。

 

以下、いろいろ引用。眼の良し悪しについても「子孫を多く残す」ことが大事であること。

 

直感に反するかもしれないが、見えるものをありのまま反映するのが良い眼なのではない。真実を反映することより、事実とは異なる見え方が生存率を上げ、子孫を多く残せるのであれば、そのような見え方が自然淘汰により進化するのだ。(p.36)

 

以下の部分、「おふたり」「お考えに」の「お」に傍点。お茶目。

 

そのようなおふたりが、さっそく批判論文を書いたのだ。(略)なにせ、ご両人ともが「これは捨ておけぬ」、とお考えになったのだから。(p.150)

 

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実験のセッティングが重要である件。

 

ホンソメは確かに高度な認知能力を持っている。しかし、魚類ではじめて鏡像自己認知が見つかったのがホンソメである理由は、彼らの賢さゆえではない。寄生虫に似せたマークを気にする性質のためである。この性質が利用できたのでマークテストの困難さが克服できたのだ。(p.208)

 

以下の部分、実はホンソメも(他の多くの生き物も)言語に近いシステムを、思考に転用できるシステムを、生得的に持っているのではないかと思う。

 

しかし、ホンソメが見せる「ユーリカ」は、魚類が思考の末に自分だと理解した瞬間と言えそうであり、この例は言語を持たない動物も、思考ができる可能性を示している。言葉を持たない鳥のカケスも、過去を振り返ることや、将来のことを思い描くことができる。(p.242)