絶滅の人類史

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新書の科学本にありがちな「作者が主張するやや癖のある学説」がなくて安心して読めた。

 

科学的な内容とは別に、作者が言いたいことは、それはそれで分かる気がする。人類が他の種を絶滅させたり、あるいは将来人類が絶滅したりするのは、科学が見出した真理だけど、それは絶望とは違うのだと思う。

 

だが、直立二足歩行は不便で、生きていく上であまりよくない特徴かもしれない。もし便利な特徴なら、いろいろな動物の系統で、直立二足歩行への進化が起きてもよさそうなものだ。空を飛べる能力でさえ、昆虫と翼竜と鳥とコウモリという複数の系統で進化しているのだ。ところが直立二足歩行は、気が遠くなるほど長い進化の歴史を見渡しても、人類でしか進化していない。少し不思議な感じがするが、人類以外に直立二足歩行をする動物はいないのだ。(p.25)

 

たしかに。直立二足歩行は随分と奇妙な生態だ。

 

つい私たちは、進化において「優れたものが勝ち残る」と思ってしまう。でも、実際はそうではなくて、進化では「子供を多く残した方が生き残る」のである。(p.144)

 

わかりやすい。

 

実は石器を作るのはなかなか難しい。木の枝や石を道具として使うチンパンジーにも、石器は作れない。コンピューターを使ってヒトとコミュニケーションは取れるのに、いくら教えても石器は作れないのだ。(p.121)

 

そう言われたら、たしかに「石器」は聞いたことないな。チンパンジーとか、力はあるみたいだから、教えれば石器くらい作りそうなものだけど。

 

どうしてホモ・エレクトゥスは、ハンドアックスなどのアシュール石器を面倒くさがらずに作ったのだろう。よほどいいことがなければ、作る気がしたいだろうに。きっと、アシュール石器を使えば、美味しいものが食べられたのだ。(p.157)

 

美味しいもの。

 

しかし、文化が伝わっていくには、それを受け入れる能力も必要だ。誰かが素晴らしい発明をしても、別の人がその素晴らしさを理解できなければ、発明は広がらない。別の人が「いいなあ」と思わなければ、発明は伝わらない。(p.213)

 

「いいなあ」

 

 

絶滅の人類史―なぜ「私たち」が生き延びたのか (NHK出版新書)

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