鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

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楽しい。大量の無駄な雑学、ネタ、専門知識と、ほんの少しの本音らしき何か。

 

むかしのウェブでどっぷり読んでた「雑文」(「雑文祭」とかやってた雑文)が、丸々一冊。これは良い本に出会った。

 

いくつか引用。

 

亜種ウグイスに罪はない。聟島でのハシナガウグイス絶滅も、外来種の野生化も、外来種駆除も、全て人間の仕業だ。しかし、罪の有無と、在来の鳥に対する影響への配慮は別の話だ。ひとたび個体数が増えるとその対処は格段に難しくなる。場合によっては、増加前に駆除する英断も必要とされる局面である。もちろん、これも自然の推移と現状を見守ることは容易である。しかし、それが模範解答とは限らない。

自然を管理するなど、傲岸不遜かもしれない。それでもなお、人の影響を受けて目の前で変容していく生態系を、見ない振りはできない。亜種ウグイスは、私を悩ませる懸案事項の一つだ。こうして、私はウグイスと不仲になったのである。(p.38)

 

理系研究者の悪い癖だ。全ての行動にもっともらしい理由をつけたくなるのだ。理由がないと不安になり、ストレスが高じて軽犯罪に手を染めそうになる。社会の秩序を守るためにも、行動には論理的な理由が必要なのである。(p.75)

 

野生動物の運動は非常に優れており、人類の崇拝の的となってきた。鳥のように飛びたい。イルカのように泳ぎたい。ナマケモノのように怠けたい。彼らの洗練された運動能力は常に人間の一歩先を行っている。(p.105)

 

その際学生に向かって、日本ではハチの幼虫を食べるのだとうっかり口にしてしまった。

学生たちはソワソワし始める。鳥のことを忘れてハチを探し始め、巣を突き止め突如襲撃する。ハチの巣を片手に笑みを浮かべ、モリモリと幼虫を食べ始めるその姿は妙に誇らしい。新たに得た情報を、即座に検証する姿勢に、若き研究者としての有望さを感じた次第である。(p.144)

 

 

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。