- 作者: 加納朋子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/07/12
- メディア: 文庫
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実は叙述トリックは嫌いなのですが、この本は素直に読めました。
叙述トリックのせいで読者は、物語の断片がひとつに繋がるのをじっと待たなくてはならないのだけど、この物語では読者だけでなく、物語の登場人物たちもみんな、最後の繋がりを待ち続けている。トリックというより、「上手い語り口」だと思った。なるほど叙述トリックにはこんな効果があるのか、と。
エンディングも(叙述トリックにありがちな暗いものではなく)軽やかで、気持ちよく読み終えることができた。幸せです。
あと、例によって本質ではないけど、以下の「騙された感」はよくわかります。やはり騙されてますよね我々は(我々って誰だよ)。
騙されていた、と脈絡のないことを思った。母と同年齢くらいに見える、ごく普通の、優しそうなおばさんが、こんなにもお金持ちだったなんて。(p.11)