いとも優雅な意地悪の教本

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なんだか良い本でした。【面倒臭い本ですが。】

 

本題とは別に、アマデウスモーツアルトとかサリエリとか)にとても興味が湧いてきたりしました。

 

暴力というのは、実行行為だけではなく言葉の上だけであっても、単純な行為なので、「誰がやったか」はすぐに分かります。「誰がやったか」が分かる上に、単純な行為はその単純さゆえに、簡単に伝播します。つまり、暴力は簡単に応酬され、簡単に連鎖を生むということです。(p.21)

 

「私は本流に属する人間だ」と言ってる人間に対して、「いや違う。お前は本流をはずれた人間だ」などと言ってしまうと、差別になります。つまり、誰でも「私は本流だ」と言えて、「本流の立場」を仮想することは出来るのです。だからどうなのか?  みんな意地悪なんかをする必要がなくなって、平気で暴力的になれるということです。(p.33)

 

 

 

いとも優雅な意地悪の教本 (集英社新書)

いとも優雅な意地悪の教本 (集英社新書)

 

 

 

 

 

 

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

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楽しい。大量の無駄な雑学、ネタ、専門知識と、ほんの少しの本音らしき何か。

 

むかしのウェブでどっぷり読んでた「雑文」(「雑文祭」とかやってた雑文)が、丸々一冊。これは良い本に出会った。

 

いくつか引用。

 

亜種ウグイスに罪はない。聟島でのハシナガウグイス絶滅も、外来種の野生化も、外来種駆除も、全て人間の仕業だ。しかし、罪の有無と、在来の鳥に対する影響への配慮は別の話だ。ひとたび個体数が増えるとその対処は格段に難しくなる。場合によっては、増加前に駆除する英断も必要とされる局面である。もちろん、これも自然の推移と現状を見守ることは容易である。しかし、それが模範解答とは限らない。

自然を管理するなど、傲岸不遜かもしれない。それでもなお、人の影響を受けて目の前で変容していく生態系を、見ない振りはできない。亜種ウグイスは、私を悩ませる懸案事項の一つだ。こうして、私はウグイスと不仲になったのである。(p.38)

 

理系研究者の悪い癖だ。全ての行動にもっともらしい理由をつけたくなるのだ。理由がないと不安になり、ストレスが高じて軽犯罪に手を染めそうになる。社会の秩序を守るためにも、行動には論理的な理由が必要なのである。(p.75)

 

野生動物の運動は非常に優れており、人類の崇拝の的となってきた。鳥のように飛びたい。イルカのように泳ぎたい。ナマケモノのように怠けたい。彼らの洗練された運動能力は常に人間の一歩先を行っている。(p.105)

 

その際学生に向かって、日本ではハチの幼虫を食べるのだとうっかり口にしてしまった。

学生たちはソワソワし始める。鳥のことを忘れてハチを探し始め、巣を突き止め突如襲撃する。ハチの巣を片手に笑みを浮かべ、モリモリと幼虫を食べ始めるその姿は妙に誇らしい。新たに得た情報を、即座に検証する姿勢に、若き研究者としての有望さを感じた次第である。(p.144)

 

 

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

 

 


 

猫が見ていた

‪‪猫、という言葉のパワーだけで買ってしまった。

 

北村薫「『100 万回生きたねこ』は絶望の書か」と、井上荒野「凶暴な気分」が心に残ったのは、多分いま疲れてるせいだと思う。

 

良いな、と感じたのは加納朋子「三べんまわってニャンと鳴く」。‬

 

 

 

 

満願

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‪‪トリックだけでなく、物語があり、良かった。久しぶりの(まる二か月ぶりの)読書で気力が続かないかと不安だったが、払拭してくれる面白さ。一気に読めた。‬

 

 

満願 (新潮文庫)

満願 (新潮文庫)

 

 

 

書店ガール

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小説なのに、テレビドラマみたいだった。不思議な感覚。

 

 

書店ガール (PHP文芸文庫)

書店ガール (PHP文芸文庫)

 

 

 

‪貴族探偵対女探偵

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貴族探偵対女探偵」麻耶雄嵩 #読書‬
‪トリックを成立させるためなら、どんな不自然なシチュエーションもいとわない作者さんの勇気が素晴らしい。

 

物語そのものが魅力的なので、このまま突き進んで欲しい。‬

 

 

 

貴族探偵対女探偵 (集英社文庫)

貴族探偵対女探偵 (集英社文庫)

 

 



貴族探偵

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一点突破の推理がお見事。テレビ版は見てません。 

 

 

貴族探偵 (集英社文庫)

貴族探偵 (集英社文庫)

 

 

 

こまり顔の看板猫! ハチの物語

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周りの人たちを次々と幸せにするけど、飼主(作者)本人には特別な幸福は訪れないあたりが、なんだか悪くない。それでも飼主は猫がいると幸せ、というのがとても良い。

 

 

 

こまり顔の看板猫! ハチの物語 (集英社みらい文庫)

こまり顔の看板猫! ハチの物語 (集英社みらい文庫)

 

 

 

 

 

スローハイツの神様

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「このチヨダ・コーキって、ほぼ西尾維新だよなあ」などと無責任なイメージを持ちながら読んでいたのだけど、最後の最後で、解説が西尾維新だったので驚いた。

 

あと、何の前触れもなく松本零士の戦場まんがシリーズが出てきたのにも面食らった。

 

カメラの前に現れた彼は、今と同じようにTシャツとジャージ姿だった。違うのは、Tシャツに松本零士の『スタンレーの魔女』の日本軍爆撃機が描かれていたことと、ジャージが短パンだったことだ。(p.134)

 

 

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)

 
スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)

スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)

 

 

 

中途半端な密室

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「ミステリー」よりも「推理小説」という言葉が似合う短編集。やっぱり「推理小説」は良いなあ。

 

内容とは関係ないけど、舞台が岡山県というのは、実はとても珍しいことなのでは。

 

 

中途半端な密室 (光文社文庫)

中途半端な密室 (光文社文庫)

 

 

 

静かな炎天

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‪‪今回もホラー成分は控えめ。降りかかる不幸を淡々と受け止める葉村さん。‬

 

 

静かな炎天 (文春文庫)

静かな炎天 (文春文庫)

 

 

 

さよならの手口

葉村晶シリーズは二作目以降ホラーだったので、覚悟していたのだけど、今回はそうでもなかった。

 

葉村さんが、何とか持ちこたえようとして、でもギリギリ無理な瞬間が、心に残ります。

 

さすがに我慢の限界を超えた。わたしはベッドに身を起こしてわめいた。
「いい加減にしろ。そもそも、うちにはあんたのほうから押しかけてきたんでしょ。(略)」
戸口で大きな咳払いがした。看護師が立っていて、お静かにお願いしますね、と言った。倉嶋舞美は唇を噛み締めていたが、看護師を押しのけるようにして出て行った。
わたしは苦労してベッドを降り、同室の患者たちに騒がせた詫びを言い、カーテンを閉めてベッドを元の形に倒した。横たわって、右腕を目の上にのせて、眠り込むまでの間、少しだけ泣いた。(p.346)

 

あと、葉村さんの心のつぶやき、叫びを引用。

 

「(略)猫好きに悪い人はいないんだから」

そうだったのか。世界征服を企む悪の結社の親玉は、たいてい猫を膝にのせているものだと思っていた。(p.80)

 

「そんなのおかしいじゃない」

倉嶋舞美はいきりたった。ああ、おかしいよ。だから? 四十過ぎまで生きてきて、この世がおかしいってことに、いままで気づかなかったわけ?(p.344)

 

 

さよならの手口 (文春文庫)

さよならの手口 (文春文庫)

 

 

 

 

 

 

ヴィラ・マグノリアの殺人

登場人物が多くて(試しに数えてみたら 40 人以上いた)、かなり疲れたのだけど、全体的には楽しかった。

 

双子が魅力的なのは当然として、駒持警部補の「うちの母ちゃん」が、刑事コロンボの「かみさん」みたいで良かった。

 

登場人物が多いときは、人が増えるたびにメモに書き出すと、わりと楽に読めることが分かった。

 

 

ヴィラ・マグノリアの殺人 (光文社文庫)

ヴィラ・マグノリアの殺人 (光文社文庫)

 

 

 

ここに死体を捨てないでください!

前半は偶発要素満載なのに、後半はちゃんと推理小説として楽しめた。最後の鵜飼さんの台詞がよかった、

 

「山田慶子は、僕の依頼人だ。結局、僕も彼女の意思で動かされていたのさ。あの二人と同じようにね。そうは思わないか」

「…………」

そういえばそうかもね、と朱美はようやく腑に落ちた。(p.367)