華氏 451 度

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SF というより、「本」の小説だった。本を読む/所有する/残す物語。「本すげえ」と一気読み。良かった。

 

いわゆる「本の挿し絵」があるのも良い。本には「本の挿し絵」があるべき。

 

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諦めのようにもとれる言葉に、芯の強い希望を感じた。

 

「もしそうならなければ、待つしかないだろうな。本を一語一語、口伝えで子どもたちに伝えていくんだ。そして子どもたちも待ちつづけながら、ほかの人間に伝えていく。もちろん、そんなやり方では失われてしまうものも多いだろう。しかし、聞く耳を持たぬ相手に聞かせることはできないんだ。そういう連中も、いずれは、なにが起きたのか、なぜ世界は足もとで爆発してしまったのか疑問に思って、考えを変えるときが来る。いまの状況が永遠に続くわけではない」(p.254)

 

以下のところ、切なくて、何度か読み返した。色んな角度から心に刺さってくる。

 

モンターグは歩きながら、横目でひとりひとりの顔をちらちらと盗み見ていた。

「本を表紙で判断してはいかんぞ」と誰かが言った。

全員が静かに笑い、下流への旅はつづいた。(p.258)