- 作者: 外山滋比古
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1986/04/24
- メディア: 文庫
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学校教育はグライダーを量産するが飛行機は作らない、と力説のエッセイからスタートするが、あとに続くのはグライダーを引こうとしているとしか思えない文章ばかり。ここは開き直って、グライダーのための知的実用書なのだと思うことにした。そう思って読むとなかなかの良書だ。以下、枝葉引用。
宮澤賢治はどういう信仰をもっていたかといったことをいまの高校生は教えられる。それが幸福かどうかははなはだ疑わしい。親切がすぎて、アダになっている。(p.20)
「幸福かどうかははなはだ疑わしい」のところは賛成だが「親切がすぎて、アダになっている」のところは何のおせっかいかと思う。親切と取るかアダと取るかは本人が決めることで、教える側が選別することじゃない。
“見つめるナベは煮えない”
ということわざがある。早く煮えないか、早く煮えないか、とたえずナベのフタをとっていては、いつまでたっても煮えない。(p.38)
手元の英和辞典や国語辞典やことわざ辞典をいくつか調べてみたが、意味が違う。このことわざにフタをとるような意味合いはない。奥付を見ると 83 刷とのことだが、出版社の人も印刷会社の人も読者の人も誰も気づいてないのか?
おもしろい文章というのが、ほとんどストーリーのあるものという日本の傾向は、抽象的理解力のひよわさと表裏をなしている。(p.202)
日本は抽象的理解力がひよわだ、と断言されてしまった。たしかに「バナナフィッシュ日和」の面白さは分からなかったので反論はないのですが。