論理と感性は相反しない

論理と感性は相反しない (講談社文庫)

論理と感性は相反しない (講談社文庫)

一度読んでとても面白かった。「論理と感性は相反しない」+「アパートにさわれない」のセットは順当に面白かったし、理系な話をほどよく煙に巻く「人間が出てこない話」+「嘘系図」も素敵だったし、一番の名作と思ったのは「恐怖の脅迫状」で、とても切なかった。なのに、もう一度ページを繰ると、何が面白かったのか、すっかり見失っていた。なんでだろう。こんな小説もあるのだと初めて知った。忘れたころに三回目を読んで、次はどう感じるのか試してみたい。

登場人物が微妙に連鎖する連作短編で、誰と誰が交わっているのか気になる。神田川、真野、矢野、武藤の四人は問題なし。「アパートにさわれない」で武藤の息子がマツモトヨシトモと明示されているので、これが「恐怖の脅迫状」の松本義知だと判明する。そうすると流れから言って、「架空のバンドバイオグラフィー」と「素直におごられよう」のマツモトも同一人物でよいのだと思う。マツモトは大阪生まれとあるので、旧姓武藤のマツモトは当時大阪に住んでたわけで、そうすると「プライベートをなくせ」に登場する京都在住の松本さんは一体どういう関係なのだろうと、気になる。気になるけど物語の本題とは関係ないのでまあいいか。