- 作者: 三浦しをん
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/02/28
- メディア: 文庫
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四十歳過ぎたオヤジが秘密の花園もないだろうと、どちらかというと異文化交流くらいの思いで手に取ったのだけど、普通にまっすぐに面白かった。文章の細かな部分がいちいち心に響く。おいおい女子校生に共感してどうしようというのだ自分。
ちょっとセンシティブになりすぎてるのかもしれない。実生活が色々しんどいので、自分では何も解決できないと思い込んでた高校の頃についてセンチメンタルな共感を覚えているのかもしれない。
本題とは関係ないけどこの文章は残酷で恐ろしくて、素晴らしいと思った。
分類に励んでいてなによりも笑えるのは、ものすごく不細工で太って服の趣味も悪い女が、子どもの手を引いて歩いているのを見るときだ。いや待て、彼女は心根の清らかな人なのかもしれない、と自分を諌めたその途端に、女は試食のウィンナーをバクバク食べて、スーパーマーケットの床に寝そべって泣き叫ぶ子どもを口汚く罵りながら引き上げ小突くようにして歩かせたりするのだから、もう本当に信じられない。何が信じられないって、そんな女を妻にしてあまつさえ欲情をもよおして子どもまで作ったらしい彼女の夫が信じられない。驚異の精神力と性欲の持ち主だと思う。そういう男を宇宙空間に送るといいだろう。彼なら過酷な労働にも耐えて見事宇宙ステーションを完成させられる。つらい現実を直視しないらしい性格と、どんな困難にも枯れることのない繁殖力は並のものではない。きっと宇宙向きだ。(p.101)
とても良い流れだったので、ものすごく真剣に、一字漏らさず読み取ろうとして頑張ったが、最後の「きっと宇宙向きだ」でとうとう吹いてしまった。