下流の宴

下流の宴

下流の宴

他人を理解しようとしない人たちが互いに「自分は悪くない」と自己正当化し続けることで人間関係が崩壊していく物語、なのだと思う。

主要登場人物はみんな「自分はちゃんとやってきたのに」と嘆くのだけど、そもそも「ちゃんとやったから、悪いことをしてないから、自分は成功するはずだ」という考えが理解できない。ちゃんとやろうがどうだろうがトラブルは全員に平等な確率でやってくる。世界は不可避のトラブルであふれている。トラブルを避けようとする努力が無駄だとは言わないが、本質は「トラブルに出会ったときどう対処するか」にあるはずだと思う。

トラブルが発生するまでの描写が素晴らしくて引き込まれるのだけど、トラブルが顕在化すると判で押したように登場人物が「自分は悪くない、どうしてこんなことに」と嘆き始めて解決の努力をちっともしない(本人は解決のつもりかもしれないが火に油を注いでばかり)。最初のうちはそのたびに興ざめしてたのだけど、あまりに同じパターンが繰り返されるので、最終的にはそれこそが作者の主張なのだと理解することにした。たぶんそうなのだと思う。