- 作者: 二葉亭四迷,十川信介
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2004/10/15
- メディア: 文庫
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注がすごい。本文 261 頁で、注が全部で 654 個。約物も興味深い。漢字の「引」を拗促音のように小さく置いて音引き「ー」を表したり(p18 他)、「○」と「○」で括って挿入を表現したり(p45)、白抜きの圏点や(p173)白ゴマ句読点(p209)まで。いずれも実物を見るのは初めて(「○」の挿入は知識としても初めて)。自由奔放で品の良い当て字訓も魅力的。
ちゃんと当時の挿絵があるのも素敵。そういえば子供のころ(もう三十年も前だ)に読んだ文庫本は大抵本文の前に一枚カラー絵があったし所々に挿絵があったなあ。どこに行っちゃったんだろう。最近は挿絵があるのはラノベだけだ(笑)。
二葉亭四迷といえば言文一致、という知識が邪魔して内容に期待せずに読んでいたのだけど、実際第一篇は「ありがちな娯楽小説」としか思えなかったのだけど、第二篇、第三篇とどうにもならない文三、お勢を見て、それこそが主題と分かったあたりで、どんどん惹きこまれた。読んで良かった。
まったく学校で学ぶ文学は大抵は読書の邪魔になるな、と知ったかぶってみるが、実はその学校教育がなければ「浮雲」なんて決して手に取らないだろうから、やっぱり学校教育に感謝。