- 作者: 眉村卓
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/05
- メディア: 新書
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エッセイの部分と、途中に挿入されるショートショートとが混じり合い、なんとなく思いが伝わってくる。予想したほど押しつけがましくなくて良かった(予想が悪すぎたのかもしれないが)。
ショートショートでは「898 ある書評」が面白かった。
無数の本が、ページをひるがえしながら中空に飛翔して行くのである。
逃げているのだ。
だが、それらの本にはみな火がついていた。燃えながら本たちはページを翼さながらに振って懸命に上昇し、夜空に浮かび、力尽きて次々と墜落するのであった。
なるほど紙の本というのは、「捨てる」という行動(たとえば庭で燃やすとか古紙の日に出すとか古本屋に持ち込むとか、あるいは実家に送りつけるとか)をしないと捨てられないんだなあ、とか。
電子データの本は「削除」一発で大量に捨てられるんだなあ、とか。あ、でも、電子データは無闇と大量に保存可能だから、そもそも捨てなくてよいのか、とか。
個人ですら「捨てなくてもよい」と思えるほど保存可能なのだから、商売している側(書店やら出版社やら)はなおさら捨てないはずで、そうだとしたら安易に捨てても後で買いなおせるのか、とか。
そうか逆に言うと、紙の本は一度捨てると二度と買えなかったりするのか、そこも本の魅力のひとつになっているのか、とか。
とか、とか、いろいろ考えた。考えたというより頭の中を通過していった。