セメント樽の中の手紙

セメント樽の中の手紙 (角川文庫)

セメント樽の中の手紙 (角川文庫)

古い本なのにちっとも古い気がしない。ひとつは文章が優れているのと、ひとつはやはり活字が新しいからだろう。古い活字で読みたかったとちょっとだけ思う。

これは小説だけど現代でいうドキュメンタリーの役割を果たしていたのだろうと感じた。知らない人には実態を伝え、実態を知ってる人には共感を与える。

面白かったのは表題作の「セメント樽の中の手紙」だけど、心にしみたのは「氷雨」の、気力が枯渇して今夜の米がなくなっても何ひとつできない父親と、その父親の手をそれでも引こうとする子ら。