ミラーニューロンの発見―「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: マルコイアコボーニ,Marco Iacoboni,塩原通緒
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/07/08
- メディア: 文庫
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感動した。科学で感動するなんて! 今まで自分が学んできた別々の分野のこと(鬱病・アルゴリズム構成・コーチング・常識の構築・進化・コミュニケーション・社会的動物の行動、などなど)が頭の中で次々と連鎖していく。
以下、主に枝葉の話を中心に、覚え書き。
一八六六年、パリ言語学会は言語の起源についての推論をいっさい禁止した。同じころ、大英学士院もその問題についての討議をしないよう会員に警告を出した。(p110)
そんな風に大っぴらに禁止せざるを得ないほどの不毛な議論というものを、逆に一度見てみたい。
彼は頷いて、目に興奮を表しながらこう言った。「美しいニューロンが見つかると、それはもう本当に美しいんだ」。確かに。(p124)
ニューロンが「美しい」だなんて、素晴らしいセンス・オブ・サイエンス。
「日和見科学」とは素敵な翻訳。原文(英語?)ではなんと書かれているのだろう。
結論。人間は大学教授のことを考えるだけで賢くなり、サッカーフーリガンのことを考えるだけで阿呆になる! (p244)
素晴らしく短絡的な結論。ミラーニューロンに関しては「短絡であることこそが理にかなっている」ので面白い。
しかし本書で見てきた数々のデータ(略)が示しているのは、自由意思の基盤にある自主的な意思決定という古典的な見方を損ないかねない、制御不能な生物学的自動性が、人間にも歴然と存在するということなのである。(p258)
「制御不能な生物学的自動性」という表現が素敵。言葉が理解を深めてくれる。
各種の研究は、さまざまな経験を言葉で詳細に描写するときに記憶が損なわれることを証明してきた。この現象を言語隠蔽効果という。(p267)
知らなかった。今まで真剣に考えるときはいつも文章化していた。かなり損していたのかもしれない。
第一に、問題を解くときに声を出して考えると、正しい答えが出にくくなることが証明されている。(p267)
なぜ「正答率が下がる」ではなく「正しい答えが出にくくなる」なのだろう。いつか確認したい。
しかしヴィトゲンシュタインや実存主義の現象学者、および一部の日本人哲学者は、他我問題が厄介な問題だとする考えに異論を唱えた。(p315)
「一部の日本人哲学者」って誰のことだろう。