夏の庭

夏の庭―The Friends (新潮文庫)

夏の庭―The Friends (新潮文庫)

無茶な理屈だけど「ああ確かにそうだ」と納得したフレーズ。長いけど引用。人生観が少し変わった。

「Aさんの家にはりんごがひとつありました。Bさんの家にはりんごがふたつありました。両方合わせていくつでしょう。はい三つですってわけにはいかないんだ。オレがわからないのは、そういうことだよ。そうだろ? おとうさんをりんごみたいにふたつに割ってしまうこともできないし、うちにはおとうさんがいないから、おじいさんがひとりだから、だからおじいさんがうちのおとうさんになるってわけにもいかない。りんごじゃないんだから。でも、どこかにみんながもっとうまくいく仕組みがあったっていいはずで、オレはそういう仕組みを見つけたいんだ。地球には大気があって、鳥には翼があって、風が吹いて、鳥が空を飛んで、そういうでかい仕組みを人間は見つけてきたんだろ。だから飛行機が飛ぶんだろ。音より早く飛べる飛行機があるのに、どうしてうちにはおとうさんがいないんだよ。どうしておかあさんは日曜日のデパートで、あんなにおびえたような顔をするんだよ。どうしてオレは、いつか後悔させてやりなさい、なんて言われなくちゃならないんだよ」